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 イスファハン  
 
イスファハン
 イラン中央に位置する古都で、町の中心にあるエマール広場から広がる名所を国内外からの見学客が訪れる観光都市。 500年前のサファヴィ王朝に最盛期を迎えた絨毯を現在まで織っており、周辺のナイン、バクチアリ、ヤラメ、カシャン、その他のトライバル絨毯の集積地でもある。 なかでも、この地で織られるイスファハン絨毯は、モチーフの多彩さ、繊細さ、織りの細かさ、色使いの華麗さ、ウールの柔らかさ等、あるゆる観点からウール(ウール・シルク)絨毯の最高峰と言える。 多彩さがイスファハン絨毯の特徴であるが、一番多いのはメダリオン+フォーコーナ―の典型的なペルシャ絨毯模様である。 セラフィアンをはじめとする有名工房が多数あり、絨毯に工房名が織り込まれている。 縦糸にシルクが使われ、パイルのかなりの部分にシルクが織り込まれ、絨毯に華やかさを添えている。
 ナイン  
 
ナイン
 イスファハンの東部に位置し、イスファハン絨毯の影響を受けて絨毯生産を大きくしてきた。 メダリオン模様で、フィールドがアイボリ、もしくは青というのが典型的なナイン絨毯で、イスファハンほどの多様さ、色使いは無い。 幾何学的にひねったモチーフも魅力的。 森のなかに動物が遊んでいる個性的な模様もある。 落ち着いた色合い、でしゃばらないモチーフより日本家屋向けと言われている。 一つの糸を分解したときの本数より4LA(シャルラ)、6LA(シシラ)、9LA(ノーラ)と分かれ、ナイン絨毯のグレードを決める。 少ないほど一本の糸が細かく精巧な柄となる。工房名は圧倒的にハビビアンであるが、本物のハビビアン製はほとんど無い(との事)。 コピー製品にタバスがあり要注意。 織りは5knots・cm以下で9LAと並べてみると模様のクリアさで明確に差がある。
ナインの近くにツデシュクがあり、ここは50年以上前に織っていた稀少な高級品。 逆サイドにジャンダックがあり、ここは今も織っており、同じく品質は高い。 ともにサインは入っていない。 
 タブリス  
 
タブリス
 イランの北西に位置する町。 昔からペルシャへの入り口として栄えてきており絨毯の歴史も古い。 ピンクメダリオン、マヒ模様、絵画絨毯の3つがタブリス絨毯の代表であるが、メダリオンの高級品、その他模様の良品にはイスファハンにも劣らない素晴らしい絨毯がある。 色合いの良さ、特にシルクの使い方が鮮やかで絨毯が一層映える工夫がされている。 タブリスの織り手は他の地域と違って男性で、特殊な器具を使って織られ裏から見ると機械で織ったように寸分狂わぬ大きさのノット(織り)からなっている。 織りの細かさをラージ(RAJ)を使って測るのがタブリスの特徴。 50RAJがスタンダードで、1cmに7つのノットの細かさ。
 ケルマン  
 
ケルマン
 イランの南東。 ケルマンの近くにケルマンラバという町があり、こちらの方がより良品を産していると言われるが、人によってケルマンとケルマンラバの差異の説明は違う。 Thousands of flowersという絨毯一面に花模様を敷き詰めた絨毯と、真ん中にメダリオン、その周りをモノトーン、その周りを細かい模様に囲む3段重ねの絨毯の2種類が典型的ケルマンあるいはケルマンラバ絨毯と呼んでよいと思う。 シルクが入らない完全ウール絨毯であるが、ほとんどが2mを超える大型絨毯で、ここに無数の花が浮かぶ華やかさは、他の絨毯にない魅力がある。
 クム  
 
クム
 イランの首都テヘランの南方に位置する聖都。 いわゆる100%シルク絨毯は、こことカシャンの2か所のみで生産。 数多くの有名工房が存在し、光の反射が生み出す光沢感と、まさに絹の肌触りが生み出す高級感はウール絨毯には無いもの。 しかし絨毯生産の歴史は短く経年100年のシルク絨毯がどうなるのかは、まだ実証されていない。  クムではウール絨毯も並列して生産されており、シルク絨毯にはまず工房名が入っているが、こちらには工房名は無い。 モチーフは多岐にわたっており、しっかり織り込まれた良品のクム・ウールは高額なシルク絨毯に比してお買い得感が高い。
 カシャン  
 
カシャン
 イランの中央部を上からテヘラン、クム、カシャン、イスファハンと都市が繋がる。 昔から栄えた町で大商人の豪邸跡が残る。 シルク絨毯は、クムほど有名ではないが、色使い、細かい織り等、クムに遜色のない出来上がりが多い。 カシャンレッド、カシャンホワイトと呼ばれる色合いは有名。 一方、カシャンの昔からの絨毯生産はウールであり、現在は赤のメダリオン絨毯が圧倒的に多いが、古い絨毯の方がクオリティーが一般的に高く、ユニークな図柄も多い。 アンテークなどの超古い絨毯で、今日見れる絨毯は、ここ製がかなりの部分を占める。
 バクチアリ  
 
バクチアリ
 イスファハンのまわりに暮らすバクチアリ族の絨毯。 花柄、メダリオン等もあるが、ウインドウ模様=バクチアリといっても過言ではないほど、赤をベースにした花、草木、動物等で一つ一つのウインドウを飾るモチーフは圧倒的な印象を残す。 クオリティの高さの割には価格はリーズナブル。 毛足が長く、ギャッベと同じくサイズ割りでは重い。
 ギャッベ  
 
ギャッベ
 イランの南方の町シラズのまわりで遊牧生活を送るカシュガイ族が生み出す絨毯。 ここではシラズ絨毯、カシュガイ絨毯(カシュクーリ絨毯)等も存在するが、日本の人気はギャッベ。 シンプルさ、素朴さが売りであるが、一つ一つのデザインはしゃれており、このアンバランスと、ペルシャ絨毯の特徴の豪華さの裏をいくテーストが人をひきつける。
 ヤラメ  
 
 バクチアリと同じくイスファハンのまわりの遊牧民の絨毯。 ダイアモンドシェープを縦に配し、鮮やかな色使いで他の絨毯との見分けは簡単。 縦糸がコットンのもあるが、多くはウールとなっており、その場合はざっくりした柔らかい絨毯となる。